結局、あーでもないこーでもないと悩み続け(奈々が)、1時間ほど店内をうろつき(奈々が)、携帯で喜ばれる出産祝いを検索し(奈々が)、検討に検討を重ねた結果(以下省略)、購入したのはガーゼ素材のおくるみとスタイ、そして靴下のセットだった。


綺麗に包装してもらい、ルンルンと店を出た奈々が顔を綻ばせながら俺に寄りかかってくる。


「ふふふ」

「嬉しそうだね」

「そりゃもう。明後日、赤ちゃんに会いに行こうね」

「うん。楽しみだな」

「ベビー用品ってテンション上がっちゃうなぁ。私も早く赤ちゃん欲しくなっちゃ………………」


言いかけて、彼女は俺の肩からガバッと勢いよく体を離した。
一瞬の沈黙。
俺は奈々の「しまった!」という心の声が聞こえたような気がしていた。


「ごめんごめん、なんでもないっ!聞かなかったことにしといて〜」


あはは、と笑い飛ばした彼女が少し早足で歩いていく。
その後ろ姿を見て、胸がチクリと痛んだ。


笑顔がちょっとだけ寂しそうだったから━━━━━。






そんな顔をさせているのは、俺のせい。
煮えきらない態度を取っている、俺のせい。
ちゃんと計画立てて金を貯めてこなかった、俺のせい。


結婚は2人でするもの。
それは柊平に言われて、大切なのは貯金額の多さじゃないって気づいた。


だけど、タイミングは?


いつ彼女に「結婚しよう」って言えばいいんだ?
まだ何も準備していないっていうのに。
婚約指輪も買っていないっていうのに。


複雑な気持ちで、先ほどの奈々の寂しそうな笑顔を思い出していた。