そうして歩くこと約5分。
目的地である、須和家にたどり着いた。


淡いクリーム色の壁が優しい風合いを醸し出す外観で、築年数もそんなに経ってないんじゃないかと思うほどだ。
見たところ核家族向けのアパートって感じで、3階建ての各部屋のベランダのほとんどではハタハタと洗濯物が揺れていた。


部屋番号を確認しながら1階の奥の部屋の前で立ち止まり、年賀状の住所と照らし合わせる。
うむ、どうやらここで間違いないようだ。


愛里ちゃんと2人で選んだ、出産祝いのメラミン素材の子供用の食器セット。それから愛里ちゃんオススメのお菓子。
それらふたつの袋を手にぶら下げて、インターホンを押した。


まだ赤ちゃんも小さいし、外出しないで家にいるだろう。
連絡無しで俺が現れたらどんな顔するだろう。
梢が大きな目をさらに大きくして感動の眼差しを向けてくるのが想像出来る。


わざわざ来てくれたんだ!ありがとう!
なんつってね。


部屋の前でルンルン気分で鼻歌を歌っていたら、カメラ付きのインターホンのスピーカーから低い声が聞こえた。


『はい』


その声は柊平だとすぐに分かり、俺のテンションは即刻マックスになった。
尻尾フリフリ状態でインターホンのカメラに向かってウインクする。


「俺だよ!柊平、俺!」

『申し訳ありませんがオレオレ詐欺はやめて下さい』

「俺だよー!高槻優斗ー!」

『………………知ってる。見えてる。何しに来たの?』


相変わらずの塩対応をしてくる柊平に懐かしさを覚えつつ、俺は持ってきた紙袋ふたつを持ち上げてカメラに映るようにして見せた。


「何って、高槻優斗の〜、突撃!須和家のにちよう……」

『近所迷惑だから騒がないで。今行くから』


ブチッと回線を切られてしまった。
彼が俺に対して釣れないのは出会った時からなので慣れっこだ。