会社を後にしたあたしは、どうしようもなくてフラフラとさまよい歩いていた。


あたしはこれからどうするべきなんだろう。
責任を取って、会社を辞めた方がいいのかな。
課長とだって顔を合わせづらいし、みんなあたしたちの関係に薄々気づいてるだろうし……。
もう、実家のある秋田に帰ろうか。


無責任以外の何ものでもない考えしか頭に思い浮かばない。
このままじゃ成長も出来ない。


あたしは公園広場の一角に腰掛けて、涙でグチャグチャになった顔を晒しながらこれからのことを考えていた。
メイクが崩れるのが何よりも嫌だったはずなのに、そんな暇もないほどに泣いた。
自業自得だ。
仕事でミスをし、好きな人に軽蔑されて切り捨てられた。それが事実。


もう誰にも会いたくない。
あたしなんか誰にも必要とされてないんだから。
あたしなんか………………。


それなのに、神田さんが追いかけてきた。
とても心配そうな顔をして、でも決して同情している雰囲気は感じさせずに、あたしを肯定してくれた。


「俺はね、君の笑顔が好きなんだよ」


あたしはドロドロの顔を隠すのも忘れて、彼の言葉を聞いた。


「朝から君の笑顔を見るだけで1日頑張ろうって思えたし、仕事中も君の笑顔で癒されたし、嫌なことがあってもいつでも笑顔で頑張ってるのを見て、すごいなって思ってた。そういう姿が好きなんだ。…………だけど今日、東山さんは笑わなかったね」

「……………………だって……それは……」


笑えるわけ、ないじゃない。
みんなに迷惑かけて、お客様にも申し訳ないことをしてしまった。


「俺は君を傷つけるようなことは絶対に言わない。いつでも心から笑ってもらえるようにしたいって思う。何度も何度も思ったよ………………、熊谷課長よりも俺の方が君を大切にするのに、って」


彼の言葉を聞いて、これは告白じゃない、と察した。


こんな状況で押されたら、その優しさに寄りかかってしまうかもしれない。
だけど彼の言葉は、そういった気持ちは全然感じられなくて。
ストンと心に落ちてきた。


「東山さん。自分を…………大事にしてね」


あたしは彼の真剣なその一言に、ゆっくりと、しっかりとうなずいた。