そんな笑顔は反則だ。
可愛らしく、照れたように、何よりも嬉しそうに笑ったからだ。


「いつも私を見守ってくれて、優しく声をかけてくれて、かばってくれましたよね」

「え…………」

「神田さんほど誠実な人、私みたいな女にはもったいないくらい。他にも沢山素敵な人がいると思います」


ここまで来て、振られるのか?それとも…………。
彼女の紡ぎ出す言葉。
手を握りあったまま、花火が打ち上がっているというのにチラリとも見ることなく俺たちは見つめ合った。


「でも、他の女の子と神田さんが並んでるのを想像したら……そんなの嫌だって……、いつの間にか思うようになってしまって……。私って本当にワガママですよね」

「………………ううん」

「……………………こんなちっぽけな女でも、好きでいてくれますか?付き合ってもらえませんか?………………好きになっても、いいですか?」


不安そうな彼女の大きな瞳。
指先は震えていて、きっと恋をするのが怖いのだ。


人目なんかどうだっていい。
人混みの中で、俺は彼女を抱きしめた。
きつく、きつく。
安心させたくて、強く抱きしめた。


「絶対、泣かせない」

「………………はい」

「絶対、不安にさせない」

「………………はい」

「いつも笑顔でいられるようにする」

「………………はい」

「君のことが好きです」

「………………私も、好きです」


耳元で鼻をすする音が聞こえた。
あぁ、泣かせないって言ったのに、もう泣かせてしまったと反省する。


だけど、いいよね。
悲しい涙じゃなくて、きっと嬉し涙だろうから。