『失礼しまっス』
 ハヤト君は、素早く部屋を立ち去った。
 そういえばヤツは、昔から要領が良かった。


「赤野、説明」
「うっ……スミマセン」

 残された私は、正座で腕組みをするオオカミさんにビクビクしながら向かい合う。

 説明は端的に、ヤバイ事ほどタイムラグをおかず正直に。
 かつて上司だった彼に散々言われてきた事だ。

 ________

 説明の後、彼はとても苦い顔をした。


「くっ、元カレだと…
 本来なら…イヤ、まあ良い。

 ……今日は、外食でも行くか?」


「あれれ?…怒らないんですか?」


 耳に手を当てて怒号に備えていた私は、おもわず拍子抜けしてしまった。

 
「はっはっは!バカだな。
 俺がそれくらいの事で、可愛いオマエを叱ったりするもんか。…さあ、行こう」
 手を差しのべて、にこやかに微笑む。
 
 またしてもキラキラスマイル…

 あれ?

 さっきハヤト君に言われた時、何か考えてたような…

「あの…オオカミさん?」
「ん?」

 はうっ、ス・テ・キ。

 首を傾げた彼の仕草が、余りにも眩しくて、私はまたもやそれを忘れた。

 もともと、惚れっぽい体質なのだ。

「…ううん。あの…ツーショット…自撮りしたい」
「は?」

 腕を組み、マンションを出るシアワセ。


 しかし_______

 その時私は、一瞬彼の瞳に映った獰猛な光に、きちんと気づくべきだったのだ。