「あ……ありがとう!」





俯きながらも部屋の中で話すには大きめの声で言う。





その声に驚きながらも桐生くんは嬉しそうに笑ってくれた。





「うん、どういたしまして」





人にお礼を言ったのはいつぶりだろうか。お母さんやお父さんくらいにしか言わない。





桐生くんにだって、あまり言わないのに……こんなふうに何もかも助けられてしまっては言いたい言いたくないの問題ではないと思う。





悔しいけど、今回は私の負けだ。