「やっと見つけた」

目を開くと、そこに勇樹がいた。

聖美は驚いて立ち上がりかけ、両肩をつかまれて座り直される。

「また、逃げられるのは簡便」

そう呟いて、彼はドサリと聖美の隣に座った。

お互い何を話していいかわからずに黙り込んで、簡易イルミネーションを眺める。

しばらくした頃、勇樹が低い声で呟いた。

「誤解だ」

「なにが?」

「……賭けとか、俺は絶対に参加していない」

信じたい……信じたいけれど、二人は同じ時を共に過ごしてきたようで、決して“相手を信じられる程”一緒に過ごしてきたわけではない。

「だから、関口は殴っておいた」

一拍の沈黙の後、聖美が叫んだ。

「えぇ!?」

驚き慌てて聖美が勇樹を振り向くと、頬に手を置かれてイルミネーションの方を向かされる。

「ちょっと、昔話をするから、あっち向いてろ」

「……解った」

呟くと、勇樹は咳払いをして、鼻をすすった。

「俺、ランドセル嫌いだったんだよね」

唐突な話し出しに、聖美はぱちくりとする。

「う、うん」

「嫌で嫌でたまらなくてさ。親にごねて、ぎゃあぎゃあわめいてたんだ」

「そうなんだ?」

「うん。聖美は、ランドセル好きだった?」

昔の事過ぎてあまり覚えてはいない。

覚えてはいないが、覚えていることもある。聖美は小首を傾げて、小さく呟いた。