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「綺麗……」

呟いて、聖美は目の前の光景をぼんやり眺めていた。

涙はもうない。

タクシーに乗っている間は泣き通しで、運転手さんに飴玉をもらった。

ゴシック服の聖美は、年よりも子供に見えたらしい。

それから「元気を出すんだよ」と言う優しい言葉も頂けた。

世の中、まだまだ捨てたものじゃない。

そう思いつつ、小学校の前に立った。

記憶にあるよりもずっと低くて簡素な外壁。思っていたよりも狭い門。そこを無関心に眺めながら通りすぎ。フラフラとグラウンドに向かっていた。

何故、聖美が小学校に来たのか自分でも解っていない。

頭の片隅に、勇樹との約束があったのかもしれない。

それから体育館からグラウンドに、出入りするために設けられた小さな階段。そこに聖美は座って、簡素なイルミネーションを眺めていた。

小さな豆電球が、点在するだけの小学校の樹木。

先程までは子供を連れた親子連れもいたが、ほとんどの観客は小学生で、夜21時も過ぎればグラウンドには誰もいなくなった。

感覚の麻痺した身体で、ふっと目を瞑る。

微かに風の音と、遠くを走る車の音が響く。

それに交じって、人の足音がした。