「賭けをした奴出て来い!! コイツに関係してた奴出てきやがれ!!」

荒れ狂う感情の捌け口として、勇樹は暴力を選んだ。

ここにいるこいつらが許せない。聖美を傷つけた奴らは許さない!!

「よせ。勇樹。殴ったって解決にならないよ」

要の声に振り返り、目の前にあった白い紙袋に目を丸くする。

要は奈々を抱いたまま、紙袋の端から顔を出した。

「先に加藤さんを見つけなきゃいけないんじゃない? 奈々の言うとおりなら、きっと一人で泣いてるんだろう?」

「……あ」

一気に冷静になれた。要はヤレヤレと肩を竦める。

「やっぱりお目付け役はいないとね。ほら、奈々。彼女の行きそうなとこに心当たりは?」

紙袋を勇樹に押し付けて、要は奈々の両肩を持った。

「家は……おじさんと聖子さんが居るから、いかないと思う。後は学校くらい」

「だとよ。お前が行かなきゃ話にならないだろうから、さっさと行け」

片手で追い払われて、苦笑する。
確かに、俺が行かないといけない。

勇樹は紙袋を抱え、走り出す。

「サンキュ、二人とも!」

そう言った、勇樹に二人は小さく手を振った。


ただ、学校と言っても、勇樹が思いつくのは高校だった。正門は閉まってい
たので裏庭から入る。

人気のない校舎は不気味で、どう見ても人がいる気配はない。
扉を一つづつ確認しながら、全部施錠してあるのに舌打ちする。

一人で居るにはうってつけだが、グラウンドも裏庭も、木陰にも聖美の姿はなかった。

どこにいる?

どこにいるんだ? 何処で泣いている?

聖美───………?