「とにかく、そんなこともどうでもいいのよ」

「わかった」

聖美は頷きながら、いつもの駅の改札口を通り抜けた。

本来なら、奈々は別の駅を利用するので、見慣れない駅にキョロキョロと辺りを見回している。

「奈々ごめんね。迎えに来てもらって」

そう言うと、奈々は苦笑して肩を竦めた。

「ちぐさの場所知らないんじゃしょうがないじゃん? それにたかだか一駅だし? 中学時代はよく遊んだじゃん?」

「まぁ、そうだけど」

高校になって、互いに行き来することは少ないが、それでも奈々とは中学校から一緒だった。

「それにしても、幼馴染みとは全然知らなかったよ」

聖美は、要と話している奈々は見たことがない。
同じクラスの幼馴染みなら、少し位は話をするだろうに、奈々と要はそんな様子は全くなかった。

「学校では話さないようにしてたから」

ポツリと呟いて、奈々は真剣な顔をする。

「いい? パーティーが終わって、ツリーの他に木村に何か誘われても、ついてくんじゃないわよ?」

「なんで?」

「男ってのは油断も隙もありゃしないからよ!」

「油断と隙を作らなければいいの?」

「あのね? そういう問題じゃなくてね?」

苦笑混じりの奈々の言葉にかぶさって、電車がホームに着く。
それに乗り込んでから、改めて聖美は奈々を見た。