「その格好で行くの?」

「うん。奈々様のナイスバディに男どもをメロメロにさしちゃ悪いでしょ?」

ニッコリと笑う奈々ではあったが、どこか引きつったような笑顔に聖美は首を傾げる。

「なにかあった?」

奈々は驚いたように聖美を見て、それから視線を彷徨わせた。

「あんた、その、人の表情読むの得意だよね~」

「うん。見てるからね」

「……大人の事情があるの」

「要くんが原因?」

ずざっと音を立てて、奈々が聖美から離れる。

「そのたまに鋭いところは何!?」

「前と同じセリフだったし」

キョトンとした顔で首を傾げる聖美に、奈々は溜め息をついた。

「まぁ、いろいろとあるのよ、いろいろと」

「ふぅん?」

「とにかく! あんな女たらしはどうでもいいのよ!」

「女たらしなんだ?」

「そうよ! 特定の彼女も作らないでフラフラして! 親がいないのをいい事に、家に女を引っ張り込んでは何してるんだか!」

「詳しいね……」

それは“要をよく見ている”ということでもあるのだが、今それを奈々に言うと怒られそうな気がするので、聖美は言うのをやめる。

「嫌でも見えるのよ!」

「幼馴染みも大変だね」

「まったくだわ!」

奈々は異様な興奮をどうにか収めて、咳払いをした。