「そんな手間暇、普通の主婦でもやらないぞ!? 加藤ってもしかしておばさんなの……」

勇樹は要の後頭部を叩き、奈々はお茶のミニボトルを投げつける。

とても小気味よい音が響いた。

「いてぇ」

「当たり前だ、どあほ! 家庭的といえ家庭的と!」

「言うに事欠いて、聖美をおばさん扱いするなんて何事よ!」

「謝れ! 今すぐ聖美に謝れ!」

「……すみません」

その様子がおかしくて、聖美はクスクス笑った。

「別にいいよ。主婦だし」

ゆっくりと言うと、今度は勇樹が情けない顔をした。

「そんなこと言うなって。俺が失言だったから」

「なに、おサル。あんたは聖美に何言ったの?」

奈々をキッと振り返り、勇樹は彼女を睨んだ。

「おサルって言うな! おサルって!」

「あんたなんかはおサルで十分……っ」

今度は、奈々が要のパンを口に突っ込まれている。

聖美は笑いを堪えるので苦しくなってきた。

「どうだ? 如月堂のパンはうまいだろう?」

目を白黒させている奈々に、要が意地悪そうに笑う。

「ちなみに、お前の嫌いな激辛カレーパンだ」

ぐいぐいパンを押し付ける要に、その腕をバシバシ叩く奈々。それを眺めて、聖美と勇樹は顔を合わせた。

「知らなかった。仲がいいんだな、あの二人」

「うん。みたいだね」