「ちょっと寄っちゃったかもしれない」

そう言って渡すと、勇樹は首を振って満点の笑みで返してくれる。

「すっげーうれしい」

そう言って弁当箱を開けて、勇樹は目を丸くした。

今日のおかずはエビフライ、肉じゃがのコロッケ、卵焼き、それからアスパラガスの炒め物に、ポテトサラダ、彩としてチェリートマトを飾ってある。

「てか、すげぇ…」

「うまそうだな」

要も弁当を覗き込んで感想を述べる。

「感謝しなさいよ。この子のお弁当は、最初から最後まで全部手作りなんだから」

奈々の声に、勇樹は顔を上げた。

「最初から最後まで?」

それには答えずに、奈々はただ微笑んでいるだけの聖美を見た。

「ちなみに、このエビフライは朝作ったの?」

「まさか」

「じゃ、冷凍食品?」

聖美は首を振って奈々を見た。子供を叱る母親のような視線で。

「冷凍食品は栄養偏っちゃうよ」

要はパンをかじりながら聖美を見る。

「何? ってことは、このエビフライも手作りなわけ?」

聖美は頷いて、説明を始める。

「殻を剥いてから尻尾をちょっと切ってね、水を出しておくの。それから小麦粉つけて、卵を絡めてパン粉をつけるの。それを冷凍しておけば……揚げたいときに揚げれる」

「マジで!?」

まさかそんな返事が返ってくるとは思ってもみなかったが、要は恐ろしいものでも見るように聖美を見た。