外界を遮断して、優しく包み込んでくれる。その感覚なら、勇樹もなんとなく解った。

聖美といると、外の世界はどうでもよくて、聖美の存在自体が空気を包み込むように、聖美と同じように優しくなれる。

その感覚がとても愛おしくて。

勇樹は頬を聖美の頭にのせた。

「え? あ、あの?」

あたふたと動く手にくすっと笑って、その手をにぎり、電車のドアが目的地について開く。

「行こうか」

そう言うなり、勇樹は歩き出した。

今つないだ手のぬくもりと、微かな頬のぬくもりが、勇樹にとっては宝物だった……。