「気になっちゃったわけ? 俺がどんな風に好きか?」

「……!! ………っ!!」

聖美はパクパクと口を動かし、急に俯いたから、今度は勇樹が慌てた。

「や。泣くなよ?」

「泣いてないもん! 勇樹くん意地悪だ!」

あげた顔はまだ赤らんでいて、大きな目が真剣に勇樹を見ている。

それが、また可愛い。

「うーん。騒がしいとは言われたことあるけど、意地悪ってのは初めて言われるなぁ」

照れ隠しとは取られないようにとぼけてみせた。

「絶対に意地悪だ! きっと意地悪だ!」

「そういわれると、いじめたくなるけど?」

「や。遠慮します」

その口調があまりにも真面目で、勇樹は吹き出した。

「お前って、面白いよね?」

「聞かれても困る!」

「そんなに怒るなって」

勇樹は宥めるように言いながら、嬉しさは隠しきれずにニヤニヤして、少しだけ唇をとがらせている聖美の頭を持って前を向かせた。

「前を見る! いちお道路凍ってるとこもあるから、危ないって」

「あ。解った」

聖美は素直に頷いて、歩き出す。

駅の改札を抜け、ホームに着くと、ホームの端でクラスメートの一団が、なにやら身振り手振りで二人をひやかしてきた。

聖美が腕時計に気を取られてるのをいいことに、勇樹はそんなクラスメートを勇樹は一睨みで黙らせる。

そして電車に乗ると、二人で入り口を陣取った。