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「おはよう!」

翌朝、玄関を開けた聖美に勇樹はにこやかに挨拶した。

それをぱちくりと見て、聖美は一瞬視線を彷徨わせる。

やっぱり、あのメールは引いたか?

勇樹の内心の焦りをよそに、聖美は弁当片手に大きく玄関を開けた。

「入って?」

「は?」

「お姉ちゃんに突撃される」

まったく意味がわからないでいると、奥から聖子が走ってきた。

「聖美!」

まるでリレーのバトンの様に聖子に弁当を渡し、聖美は身体ごと勇樹を押しのける。

「ありがとうね!」

目の前を聖子が走り抜けて行く。その様子を眺め、勇樹はあっけに取られていた。

「ええと……」

「朝はいつもああなの」

聖美は呟くと、ニコリと微笑んだ。

その表情に、勇樹は思わず手が出そうになって押し留める。

「昨日、途中で寝ちゃった」

聖美は少し肩を竦めて、勇樹から離れた。

「ちょっと待っててね」

そう言うなり聖美は玄関先で制服のタイを結び、コートを羽織ってからカバンを片手に出てきて、玄関のドアを閉めると、きちんと鍵をかける。

「いこっか?」

促されて、勇樹も歩き始めた。