聖美のうちは綺麗に整理整頓されていた。

あの学者丸出しの父親が片づけをするとは思えないし、それはうるさい姉もそうだろう。

『主婦』をしてるのは、きっと聖美。
思ったより大変そうだな。と思いつつも、夕飯に出されたから揚げは美味しかった。

サクッとして、中はやわらかく……あれが勇樹の母なら、肉も何もかもカラカラになっていたことだろう。

聖美はちょっと繊細なところがあった。

出会ったのは小学校一年の入学式。
黒いだけのランドセルを嫌がって、母親に当り散らしていた勇樹を、聖美はただ黙って見ていた。

勇樹の大騒ぎを笑うでもなく、桜の花びらの下で、じっと大きな黒い瞳でこちらを眺めてくる。

その不思議そうな目に、勇樹も少しだけ自分がガキくさい事をしてると黙り込んだ。

その後、聖美と違うクラスだと知って、ちょっとほっとした。

あの大きな目は、少し苦手だ。

その後は、全くと言っていいほど接点が無かった。

勇樹はいたずら好きのガキ大将を気取っていたし、聖美は聖美で、いつもおとなしく教室で本を読むような少女だったのだから無理もない。