【件名:ごめんなさい。奈々と話してました。から揚げは得意なのです。お弁当は何がいい? から揚げ以外で好きなものはありますか?】

すぐに返信が返ってきて、その早さに驚きながらもメールを開く。

【んー。いなり寿司?】

聖美は声もなく笑った。

それはなんともわかり易いけれど、逆に難しい注文だ。

【さすがにお稲荷さん用の揚げ買ってないから、それはむりです。あさってならOKです。エビフライはスキですか?】

送信を押しながら、エビフライと何を入れようか考え始めると、またもやすぐに返信が届いた。

【すんげスキ!】

『スキ』という言葉に、聖美は少し手を止めて考える。

【質問です。私のどこが好きですか?】

送信してから、しばらく無言で携帯を眺める。すぐに返信が返ってきたメールが届かない。

「……寝ちゃったかな?」

首を傾げた瞬間にメールの着信音が鳴った。

胸をどきどきさせながら、文面を目で追う。

とても簡素な返事が返ってきていた。

【すべて。】

「……え」

聖美はかぁっと赤くなって、スマホを投げ出す。

それから、意味もなくまわりを見て、枕をたたきながらうつぶせになった。

『すべて。』

すべてって!!

気分は焦っていいのか、喜んでいいのか、ごちゃごちゃになっていた。