『そりゃ、私だって奴が悪い人間だなんて思わないけどね! 恋愛初心者のあんたが、なんで相手がよりにもよって木村勇樹なのよ!』

その言い方が不思議で、聖美は首を傾げる。

恋愛初心者の私が勇樹君が相手だと、どのような意味でよりによってと言われるのだろうか?

無言でいたら、しばらくしてから不機嫌そうな声が聞こえてきた。

『……コラ』

「はい」

『きっと首でも傾げてるんでしょうけど、言っとくけど電話じゃ、首傾げてても私に見えないんだからね!!』

「ああ。そうか」

聖美は思い当たって苦笑する。

電話は滅多にしないので、ついいつもの癖が出た。

「えーと……なんで?」

また、溜め息が聞こえてきた。

『あのおサル。結構モテるのよ?』

「へぇ」

『1年のときは春、夏、秋と3人と付き合ってたし、2年になってから夏までは小杉と付き合ってたはずよ!』

聖美は驚いて瞬きをする。

「小杉さんて、ミス?」

『そうよ! ミスコン女王! 高校でミスコンがあるなんて世も末だけどね!!』

「おぉ~」

思い切り感心して頷いた。