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勇樹が帰ってしばらくして部屋に戻ると、さっそく奈々から電話がかかってきた。

来るとは思っていたので、これは予想の範囲内。結局奈々を無視して勇樹と学校をサボったのだからなおさらだ。

「もしもし」

『もしもし、聖美? あんた今日はどうしたのさ!』

勢いよくどうしたのと言われても、なんと答えていいのか迷ってしまって考える。

事実だけを言うのは簡単だが、それで奈々が納得するかは自信はない。

「うん。ちょっと」

『あの後、木村のおサルもいなくなったし、あんたはあんたで帰ってこないし、心配したじゃない!』

「うーん。ちょっと」

『ちょっとで解る訳ないでしょうが!!』

「一緒にサボったの」

聖美はベットに寝転びながら答える。

『あぅ、聖美が悪の道に……神様どうしましょう?』

訳のわからない祈りを捧げる奈々に、電話を押さえながら聖美は笑った。

『あんた、今、笑ったでしょう?』

怒ったような声に、ますます笑う。

「うん。ちょっと面白かった」

『あんたって子は。まったくもう!』

「でも、思ってたより、勇樹くんて悪い人じゃないよ」

スマホの向こうで、奈々の溜め息混じりの悪態が聞こえた。