73億分の1の純粋な感情

怖い…よな。怖くないはずないよ、な。



目の前には無理やり笑顔を作りながら未だ震える彼女。



そんな彼女に彼氏らしく気の利いた言葉のひとつでもかけようとしたが……残念ながら素敵な言葉が全く思い浮かばない。



自慢じゃないが、なんてったって俺は“彼氏初心者”。



海斗君マニュアルの恋愛項目、片思い編には、ギッチリ、これでもかってほど隙間なく文字が埋まっているが、彼氏編は真っ白。



そんな彼氏ビギナーな俺に、襲われかけた彼女が一番欲しい言葉なんて分かるわけがない。



だから俺自身が出来ることといえば…



「芽依子サン」



「なぁーに?」



その場にしゃがんだ俺は、彼女の目を見つめながらニッコリと微笑んだ。



「無理、しなくても、いい、よ?」



「っ!!」



瞬間、彼女の瞳から一粒の雫がこぼれ落ちた…と同時に、俺の体はグラリと後ろに傾いた。