73億分の1の純粋な感情

「せーんぱい?」



「………」



「ん?」



考えても埒があかない。とりあえず、保留だ。



「ねぇ、せーん」



「あ、」



「ん?」



瞬間、ふいに時計を見やればもうすぐ18時。



そろそろ家に帰りたい時間だ。



「芽依子サン?」



「はい?」



「もう帰らなくていいの?良い子はお家に帰る時間ですよ?」



彼女の胸から顔に視線を移動させた俺は、わざとらしくチラリと時計を見た。



「じゃあ一緒に帰りましょ」



「やっぱり?」



「もちろん」



すると目の前には、ニッコリと満面の笑みを浮かべる彼女。



「ついでに家に寄ってください。おねーちゃんが家に連れて来いって煩くて」



「あー…」



「先輩とあたしが付き合い始めたの。おねーちゃん、すっごく喜んでるんですよ」



「あー…」



「だから…ね?」



「いや…でも…」



しかし、いくら言葉を濁しても俺が彼女から逃れる術は無い。



「返事は?」



「えーっと…」



「中3の時、おねーちゃんの筆箱から使いかけの消しゴム盗んで、そこにある先輩の筆箱の中で未だ大切に保管されてること、ばらしちゃいますよ」



「うっ」



「返事は」



「…ハイ。ヨロコン…デ」



なぜなら俺は、ガッツリ彼女に弱みを握られているのだから。