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「おばーちゃーん!ここに置いておくよー?」


今思い出すだけでもイライラするあの日から早数日。

私は飛ばされた先で親切なお婆ちゃんに拾われた。

小さな村にある唯一のこれまた小さな教会のシスターをしているお婆ちゃんの仕事の手伝いをすること。

それが今の私の日課だ。


「あぁ、ありがとうね。そろそろお昼にしようかね」

「そうだね。皆を呼んでくるよ」

「頼んだよ」

「はーい」


孤児院も兼ねているこの教会はなかなかに賑やかな場所でもある。

孤児達が遠方の村からも運ばれてくるからだ。

中には親がいても連れてこられる子もいる。

そんな中で私は異質だった。

親がいなくて寂しいと泣くこともなく、さりとて心を閉ざしているわけでもない。

そんな私が老齢のシスターの手伝いを勝手でるのに時間はかからなかった。

それほど孤児院も兼ねている教会のシスターは忙しいのだ。

まぁ、見た目年齢的にはこの孤児院の中で年下の部類に問答無用で入るけど、精神年齢的には彼らよりも遥かに上だからね。

それよりなにより、手伝い自体は苦じゃないけど、なにより身体が子供なせいで行動が制限されるのがなんというかもう....こう、あーっ叫びだしたくなる。

そんな奇行に走るのは大抵みんなが寝静まった後だけど。


「みんなー。ごはんだよー」

「わーい!」

「きょうのごはんはなにー?」

「えー?わかんないなー。ボク、他のお手伝いしてたから」

「いけばわかる!いこうぜ!」

「おー!」

「おー!」


わぁ、元気だ。

孤児達の中でもガキ大将的な位置にいる男の子が皆を促すと、皆はその掛け声に合わせ、握り拳を天高く突き上げた。


「手を洗うんだよー」


私の声は果たして食堂へ駆けていく彼らに届いたかどうか。

うん、届いてないだろう。


「仕方ないなぁ」


私もその後を追いかけ、追いついた子片っ端から手を洗わせた。