「 お待たせいたしました 」

その時、聞きなれた不機嫌な響さんの声にハッと我に返った。

「 マドレーヌ、ガレット、フィナンシェ、クッキー、パウンドケーキをお入れさせていただきました 」

「 そう。ありがとう 」


響さんから紙袋を受け取ったお客様は「 じゃあね、店員さん 」と、私に一度微笑みドアを押す。

「 あっ、ありがーー 」

無愛想な響さんに変わって、温かなお礼をと心がけている私の言葉を遮り、いつもはカウンターから出ない響さんが、

「 ありがとうございました 」

そう言って、ドアの前までお客様を見送った。