涼也とお兄ちゃんは歩きながら話していた。
「こわいんだ…。」
涼也が言った。
「え…。」
「俺、舞梨奈に会うのがこわいんだ。俺たちのこと何も分からないんだよ…?舞梨奈に会って笑顔なんて見せられない。舞梨奈が心配するだけだ。」
涼也は弱音を吐いた。
お兄ちゃんも共感して、涼也の肩をポンポンする。
そして、お兄ちゃんは私の所へ来た。
コンコン。
「はい。」
返事する私。
扉が開き、私の傍に来たお兄ちゃん。
「どなたですか?」
「俺は舞梨奈の兄の小川夢希斗。」
「え…。」
「藤沢先生から記憶喪失になってしまったって聞いたよ。」
「ごめんなさい。何も思い出せなくて。」
「謝らなくていいんだよ。ゆっくり一緒に思い出そう?」
お兄ちゃんがそう言ってくれると、私はうなずいた。
「あの、この写真って…」
私はベッドの横の台の上に置いてある写真立てを手に取った。
