「涼也、ごめんね。」
「なんで謝るんだよ?」
「私のせいでみんなをこわい目にあわせちゃったから。」
「そんなことない。そんなの舞梨奈のせいじゃないよ。」
涼也は慰めてくれた。
「うん。」
私は少し微笑んだ。
涼也たちは、お兄ちゃんを狙った犯人が佐野さんだと思っている。
もちろん、特捜班のみんなも。
違う…。
佐野さんは絶対にそんなことしないよ…。
私はそう思う。
数時間後。
HCUの病棟内の廊下には昼間の眩しい光が射し込んでいる。
廊下を歩いていると、一人の女性が胸を押さえて苦しんでいるのが見えた。
「大丈夫ですか?」
私はその女性に近寄って声をかけた。
「誰か呼んできますね。」
私はそう言った途端、その女性は私の腕を掴んだ。
「平気です。だから、呼ばないで。」
その女性は言った。
「でも…。」
心配だったけれど、頼まれた通り誰も呼ばなかった。
