夜。



家のチャイムが鳴った。




「はーい。」




夜分に一体誰なのかな?




ドアを開けた。




「佐野さん。」



そこにいたのは、お兄ちゃんの会社の優しい同僚の、佐野準矢(さの じゅんや)さん。




近所に住んでて親しい。







「こんばんは。夜分遅くにごめんね。」



「いえ。」





「夢希斗くんいる?今日、残業があるって聞いてたんだけど。」





「まだ帰ってきてませんよ。まだ会社にいると思います。」




「そうか。じゃあこれ、夢希斗くんが帰ってきたら渡してもらえるかな?」




佐野さんの手の中には鍵があった。




「間違って夢希斗くんのオフィスの鍵を持って帰ってしまって。」



「分かりました。帰ってきたら渡しておきますね。わざわざありがとうございます。」



「いいえ。じゃあ、おやすみ。」



「おやすみなさい。」



私はそう言ってドアを閉めた。