「そっかぁ…。」
「私はお兄ちゃんがただ辞めるだけなら、横から口出しなんてしない。だけど、逮捕された上司だった人のことを考えたら、どうしても納得がいかなくて。それに、関係ないとか忘れろとか言ってほしくなかった。そう簡単に忘れられるわけないよ…。どんなことがあっても、お兄ちゃんの上司は、いつまでもお兄ちゃんの上司なんだから。」
「そうだな。
きっと舞梨奈の思い、夢希斗くんに届くはずだよ。」
「うん。」
夜、私の家。
「夢希斗くん。舞梨奈と喧嘩したんだって?舞梨奈から聞いたよ。」
「え、あ、うん。」
「はい。」
涼也がコーヒーを渡した。
「ありがとう。珍しく兄妹喧嘩してしまったよ。舞梨奈は、俺や逮捕された上司の人のことをちゃんと思って、辞めないでほしいって言った。なのに…俺さ…"舞梨奈には関係ない、もう忘れろ"って言っちゃったんだ。ほんとはこんなこと言うつもりじゃなかった。
