『栗栖棗と申します。少し用事がありまして来させていただきました。』


見ず知らずの人間が、何の用事があるというんだろう?


「何の用事ですか?」



素直に聞いてみた。

こんな夜中に用事があるなんて、緊急性の高いものだと思っていたから。



すると、返ってきた言葉は…



『今日、お会いしなければ、いけないのです。申し訳ありませんが、家に上げていただけませんか?』



このとき、私は油断していたんだ。


ドア越しにいる人の声は、少女のようなかわいらしい声だったから。


ちなみに、『棗』と女の子のような名前だったし…


私は、困った女の子が、一日泊めて欲しいと言いに来ただけだと思っていた。


あたしは、これらのことを10秒ほどで考え決心した。



「ちょっと待ってて。今すぐ開けるから。」


リビングから5歩歩けば着くような玄関まで行き、鍵を開け、ドアを開けた。



そこに立っていたのは、黒尽くめの服を着た人であった…。