「栗栖棗と申します。少し用事がございまして来させていただきました。」



不審そうな顔で、『彼方亜理紗』は聞き返す。


『何の用事ですか?』



不思議に思ってるんだろうな。



そんな風に感じた声が聞こえてきた。


だからこそ、不信感を払拭すべきだと思い、一言言った。



「今日、お会いしなければ、いけないのです。申し訳ありませんが、家に上げていただけませんか?」



いくら人を騙しているとはいえ、いつも罪悪感に包まれる。


『亜理紗』は女だと思ったのか少し考えた後、安心したような声で言った。



『ちょっと待ってて。今すぐ開けるから。』



軽やかに歩いてきて、『カチャ』と鍵が開く音がした。


『キィー』


開いたドアの向こうにいたのは、『相楽』の血縁者とは似ても似つかない人物だった。