黒く真っすぐ伸びた髪
華奢な体と透き通るような白い肌
大きな瞳は
何かを観察するようにゆっくり泳ぐ

「七瀬 椿です。
まだ分からないことも多くて
緊張もしてるんですが
皆と仲良くなりたいので
気軽に話しかけてください。
よろしくお願いします。」

こんな田舎に転入生なんて
そうそう来ないから
皆の意識が彼女一点に集中する。

「というわけで
七瀬さんは高校二年生の1学期の
まっただ中に転入することになって
不安なこともたくさんあると思うから
皆もできる限り
気遣ってあげてくださいね。
じゃあ席は…
窓際の一番後ろに用意してるんだけど
視力の問題とかあれば…」

「いえ、大丈夫です」

「そう、よかった。じゃあ席に」

彼女はクラスの注目を浴びながらも
物怖じせずに歩き、隣の席に着いた。
僕に向かって軽く頭を下げたから
僕も会釈を返した。

「泉 秋仁です。
僕、級長で岡田先生からも
君のことは聞いてたから
困ったらなんでもきいてください」

先生の話を遮らないように
小声で話しかけると
七瀬さんは小さいけれど
よく通る高い声で答えた。

「ありがとう、そうさせてもらうわ」

七瀬さんの転入で
ホームルームが長引き
そのまま1限目に入る。
授業に入ると
突然の転入生にざわついていた教室も
徐々に落ち着きを取り戻していった。