慌てて手を引いたけど、固まった一花の目は少しずつウルウルしてきやがる。
まずい…
どうする…!
「わ、わりぃ!殴ったつもりじゃない…んだけど」
当たり前だ、殴るか!
自分で突っ込みながら思わず立ち上がったオレに、黙って首を振る一花。
「ちがう…、ちがうもん。いっちゃんが誉めてくれることなんてないから嬉しかったんだもん……」
「は…はぁ?」
じゃあ泣くんじゃねー!
オレの心臓が止まるだろ!
「お前はアホか!そんなことくらいで泣くな!置いて帰っぞ」
「やだぁ…」
袖先で目をこすりながら筆記用具を片付ける。
ちょこまかと髪を弾ませながら慌てて動き出して…
そんな一花を見てたら
なんか…
なんかよくわかんねーけど
変に帰したくない気もした。