顔を上げると、そこにいたのはやっぱりダイヤだった。


さっき我慢した分、怒りが爆発した。



「あんたいい加減にしなさいよ!さっきめちゃくちゃ怖かったんだから!」


「ふーん」


「ふーんじゃないでしょ!」



ダイヤは私の隣に座った。


いつも通りの黒い服。


でも、黒い翼はないし、目は焦げ茶色だ。



「…なんで翼ないの?目はどうしたの?」

「今は人間に化けてる状態だからな。お前以外のやつにも見えてるぞ」

「えっ!?」



じゃあ白金先輩にも見えるってこと!?



「あっち行ってよ!白金先輩帰ってきちゃうじゃない!」


「店に行列できてたから、しばらく帰ってこないんじゃね」


「…もう……!」



私はまたうつむいた。


なんだか疲れたな。



「…あ」


ダイヤが立ち上がって歩いていく。


どうしたのかな?



顔を上げて前を見ると…


小さな女の子が転んで泣いてる。



ダイヤが起こして、頭を撫でた。



すると、女の子の母親らしき人が走ってきて、ダイヤに頭を下げて、女の子と歩いて行った。


女の子はダイヤに嬉しそうに手を振っていた。



………意外。



ダイヤのくせに、あんなことするんだ…。



「はー」


ダイヤは戻ってきて、また私の隣に座った。



「あんた、たまにはいいことするんだね」


「どうせ不幸にするならお前みたいなバカじゃないとつまんねーしな」


「あっそ!」



何を言っても腹立つ言葉を返してくる。


私はそっぽを向いた。