「これ、やるよ」


鮮やかな赤い玉が2つ付いた、ヘアゴムを真珠に差し出した。



「これ、なあに?」


「髪の毛結ぶゴムだよ。病気治って、そのうち髪の毛も生えてくるから、そうしたら好きな髪型しな」



そう言うと、真珠の顔がパアッと明るくなる。


「やったー!」


ヘアゴムを握りしめて、ぴょんぴょん跳ねまわる真珠を見て、自分まで嬉しくなった。


ただのヘアゴムじゃない。

玉に俺の魔力を閉じ込めてある。


これを身に付ければ、幸せな出来事が起きたり、不幸なことから回避されるようにしてある。


もう病気になったり怪我したりしないで、幸せになるためのお守り。



「おにーちゃんありがと!」


そう言って、真珠が俺の服の裾をグイグイ引っ張る。


「どうした」

「しゃがんでー」



よく分からずにしゃがむと、真珠が頰にキスしてきた。



「お礼するときはこうするって、絵本にあったよ」


そう言って、真珠がニコっと笑う。


それ、お姫様がやってたやつな。



「…他のやつにはするなよ」


「え?」



あんまりここにいると、病院で騒ぎになりそうだったから、すぐに戻ることにした。



「もっとお外で遊びたかったのにー」


抱きかかえながら、真珠は不満そうに遠ざかる山を見る。


「早く戻らないとお母さん心配するだろ。それにこれから、いつでも外で遊べるんだから」

「あ、そっか!じゃあまたあのお山の上連れてってくれる?」

「ああ」

「やったー!約束だよ!」


真珠は俺に嬉しそうに抱きついた。


誰かを喜ばせるのって、嬉しいもんなんだな。