「まだあの子どもが気になるの?」


いつもの山の上の、大きな木まで戻って、二人で枝に腰掛けていた。


空は嫌なくらい満点の星空だった。



「なんであいつ、助からないんだろうな」


ポツリと、心の声が言葉になる。



「病気でしょ?あの子どもの運命なのよ」


「なんでだよ。なんであんな純真なやつがたった4歳で病気で死ぬ運命なんだよ。おかしくねーか?」


「そうね、死んでいいようなクズ人間は他にたくさんいそうだものね」



なんとか、あいつを助けることはできないのか?



「なあ、天使ならあいつの病気くらい簡単に治せるよな?」


「ええ、でもきっと天使はそんなことしないわ」


「…なんでだよ」


「平等だの神が決めた運命だのうるさいもの」



理解できない。


俺たちは人間を不幸にして生きていくしかないのに。


天使なら人間を幸せにすることができるのに、なんでそれをしないんだよ。



なんでこの世界はこんなに理不尽なんだ。