「そういえば真珠ちゃんて、いつもそのヘアゴム付けてるよね。お気に入り?」


「あ、これですか?幼稚園の時からずっとつけてるんですよー」



私はヘアゴムの玉を手でそっと撫でてみた。



「へー。思い出が強いとか?」


「そうなんですよ、というか、私幼稚園の頃までの記憶ってあんまりなくて…」



小さいから忘れたのかな?


小さい頃の記憶があんまりないんだよね。



唯一覚えてる事といえば…。



「なんとなくしか覚えてないけど、大きな木があって、日差しが差し込んでて、あったかいところで。そこでヘアゴムをもらったんです。その記憶だけはあって」


「へー。誰にもらったの?」


「それがよく思い出せないんですよね。優しい感じのお兄さんだったのは覚えてるんですけど、顔とか全然分からなくて…」



何度かその場面が、夢に出てきたことがある。


でも、いつも相手の顔は分からない。



そして、私がヘアゴムを髪につけようと髪に手を伸ばしたところで、いつも夢は終わってしまう。



「でもなんだか素敵な話だね。もしかしてそのお兄さん、真珠ちゃんの初恋の相手だったりして」


「ま、まさか!」



そうだったのかな。


でも、それすらも覚えてない。



あのお兄さんは誰だったんだろうな。



だけど、また会えたら会ってみたいな…。