私の前から消えないで

私達はふたたび駅へと歩き出す。

「え、さっき、なんで道路を写メってたの?」

唐突で、どう答えればいいかに困った。

「…そのうち、わかるよ。」

「…ふはっ、わかんねぇと思うけど?」

笑って、冗談のつもりなんだと思う。私も笑ってみせるけど、こっちは全然冗談なんかで言ってるんじゃない。
私は毎日、医者でもないのに死と隣り合わせでおびえながら生きている。

「…ん?あれ、定期がない。」

「え?」

冴木くんがそう言いだした時は、もう改札の前だった、

「ごめん、どっかで落としてきたかも。探してくる。待っててください。」

そういって焦って駅を飛び出していく冴木くん。
その姿を見送ってすぐ横のベンチにでも座ろうとしたとき、

「うわっ!?雨じゃん!さっきまで晴れてたのに!?」

驚いた冴木くんの声が割と近くから聞こえた。
あ、私、確か折りたたみ傘持ってた…

「冴木くん!入って!」

傘を開いて飛び出していく。ザーザー降ってるわけじゃないけど、これは濡れちゃうなって位の雨だった。

「…ごめん、さんきゅ!」

そう言って照れくさそうに笑う、ちょっと濡れた冴木くんが、すごく色っぽく見えた。
傘ひとつ、人ふたり。
もちろん、私たちは相合い傘という状態になっているわけで。
肩がさっきからコツンって程度にぶつかる。それがすごく恥ずかしくて、ドキドキして、心臓が破裂する寸前とは、まさにこのことだと実感させられた。

「…あった?」

「まだ無い。どこに落としたんだろ。」

濡れた地面を注意深く見ながら探す。
何とか見つけようとしていた私は、どこまで来たのかという状況を呑み込むまでに少し時間がかかった。