私の前から消えないで

「…すごい混雑だね…。」

「…うん。」

ミスドに着いた私たちは、店内のあまりの混み具合に驚いて、ドアのところで呆然と突っ立っていた。

「お持ち帰りにして、外のベンチで食べようか?」

冴木くんがあきらめようと思っていたらどうしようと思いながら、そっと訊いてみる。

「そーだな、んじゃ、並ぶか!」

「うん!」

あきらめのかけらも感じさせずに、快く同意してくれた冴木くんの言葉に喜びと感動を覚えた。
冴木くんの言葉には、魔法がかかっているのかと思ってしまうくらいだった。

「俺、やっぱポン・デ・リングだな。グレープフルーツジュースもほしいな。野畑は?」

「私は…、ハニーチュロ!あと、クラムチャウダーも飲みたい。」

「おっけ!」

ふと、私は冴木くんになんの遠慮もせずに食べたいものを言っていることに気がついた。と、同時に、冴木くんが私の食べたい物まで注文しようとしてくれていることにも気がついた。

「優しすぎるよ…。」

ボソッと呟いてみる。
それが、冴木くんの耳には届いていなかった。