「…姉さん。

大丈夫、ただのごっこ遊びだよ。

誰も俺たちなんて見てない。

外はお祭りだもの。

この部屋にたった二人。

今、だけにする、から。」



顔を隠した私に

日向くんの表情はわからないけれど。


震える言葉の意味も解らないと

いうけれど。



「…姉さんて、よんだりしないで」



「…花夜。」



体育館からでしょうか。

軽音部の演奏が遠くから

聞こえてきます。


文化祭のざわめきなど

どこか遠くから。



姉にならなければ

出会えなかった私の弟。


姉でなければ

なんの罪もなかった

私の愛しい人。


大好きな、

可愛い日向。



ティアラから

垂れている薄い布が

日向くんの表情を私に

見せないまま、

唇を重ねて、

何も知らないふりをした。