「怖い。」
自分がどんな人間か、どこまで普通じゃないのか。
それがこの年になってもまだ分からないから。
まただ。
どうしても、龍青と一緒にいると安心してしまう。
泣きたくなってしまう。
涙が、もう一度、流れてくれそうな気がしてしまう。
でもやっぱり、私は、もう泣けない。
「お前は、綺麗だ。」
龍青が放った言葉に耳を疑った。
少し冷たいそよ風が、龍青の香りを私の元まで運んでくれる。
私が、きれい?
「何、泣きそうな顔してんだよ。」
「そんなこと…、初めて言われた。」
違う。
きれいって言われたのは初めてじゃない。
初めてじゃないはずなのに。
どこか苦しくて、切なくて、少し恥ずかしくて。
なのに甘くて、優しくて。
とても温かくて、心地いい。
そんな綺麗を、初めて聞いたの。
「なんだそれ。」
龍青は、フッて笑みを零すと、頭を軽くポンポンと叩いた後、優しく撫でた。
「来れるか?」
来たいんだろ?って。そんなお見通しな顔しないでよ。
行きたいに、決まってるじゃん。
「行く」
短くそう答えると、彼はまた満足げに微笑んで。
何も合図を出さず、踊り場へと戻ろうとする。
「龍青…っ。」
少し勢いをつけて呼び止めると少しだけ振り向いてくれた。
「ありがと。」
本当に、ありがとう。
