嬉しくて、訳が分からなくて、
1度ボロアパートに帰るとドアを閉めるのも忘れて急いで支度した。
ほんとにいいの?
今日だけだって分かってる。
分かってるんだけど、その優しさが嬉しかった。
「準備、出来た。」
「乗れ。」
「ねえ、ほんとにいいの?」
「俺がそうしたい気分だった。」
「うそつき。」
メットを受け取ると、後ろに乗った。
大きな優しさに包まれてる心地がする。
「ありがと。」
道路の音で聞こえないと思うから、小さくお礼を言った。
「着いた。」
その声に背中から顔を上げると目の前は高級マンションとして名を馳せる一級マンションだった。
「え?こっち?」
「何言ってんだ当たり前だろ。」
いや、龍青何者なの。だいぶ当たり前じゃないし。
「ここまできてやっぱ迷惑かけるの嫌だから帰るとか変なこと抜かすんじゃねえぞ。」
「わ、分かってるし。」
若干言おうとしてたの完全に見抜かれてた。
「ほら来い。」
エントランスでぼーっと突っ立ってると龍青はドンドン奥へ進んでいく。
「あの、急に来て家族の人に迷惑かけたりしないの?」
「一人暮らしだよばーか。」
「うそでしょ?」
じゃあ私めっちゃ恥ずかしい奴じゃない?
一人暮らしの人に1人寂しいよーって言っちゃったんだよね?
「変な気起こすなよ。
とりあえずちゃんと俺が一人暮らしの理由話してやるからいま考えてることやめろ。」
バレてる。
「ありがとう。」
ひとつひとつの気遣いが、温かくて。
少しずつ、何かが溶けていく感じがした。
