「守ってやるって…言ったのにな。
情けねえ。」
龍青は、俯いて。
握りしめた拳は、あの人たちと自分への怒りの表れなのか。
「龍青。海、入ろう。」
私が誘っても、龍青はその場を動かない。
「じゃあ龍青、ここに座って。」
私が肩を軽く抑えて、座らせようとする。
「もうっ。いいから座って。」
龍青を無理矢理座らせると、向き合うようにして私も座る。
龍青の手を握ると、龍青は少し驚いたような顔をした。
「龍青、よく聞いて。
私、龍青に守ってもらおうなんてそんな甘ったれたこと思ってないよ。
自分の身は、自分で守りたい。」
龍青の顔は、悲しそうで。
それは、そうだろう。
守らせてくれと告白してきた相手にこんなことを言っているのだから。
龍青からしたら、自分を拒絶されたって感じるのかな。
「私、龍青と出会って、幸せだった。
…一人の人として、大切にされる幸せを、初めて味わったの。
怪我したら怒ってくれる人がいて、
学校にいなかったら本気で心配して探してくれる人がいて、
お昼ご飯を一緒に笑いながら食べてくれる人がいて。
こんなに幸せでいいの?って思うくらい。
生きてきて初めて、瀬尾凛として生まれてきたことを、幸せに思った。」
たった一人愛して欲しい人に、愛してもらえて。
小さな約束もちゃんと守ってくれる。
龍青は、その言葉をうつむきながら聞いていて。
「こんな幸せがあるなら、
今までの辛かったこともありかなって思っちゃうくらい、
いますごく幸せなの。」
気がつくと、私の目からは少しだけ涙が溢れていた。
「私、龍青といたら、辛かった出来事も、
何ヶ月後何年後かの将来、笑い話に変えれちゃうと思う。
今日のことだって。
いつかきっと、
〝あんなことがあった後普通に海で遊ぶとかどうかしてる〟
って笑い飛ばせる日が来ると思うの。
龍青。
私、あなたがいるからここまで強くなれた。」
