もっと、キスして



3分も経たないうちに、龍青と泰成がこちらにやってきた。

「凛…!」

やっぱり、龍青の顔はものすごく辛そうで。
そんな顔をさせているのが私だと思うと、胸が苦しかった。

全身汗だくで。
どれだけ心配してくれたんだろう。

「遅いよ…。」

精一杯の笑顔を作ってそういうと、
龍青は安堵したように息を漏らした。

「なあ、なんで逃した?」

警官の人に対する龍青の声は厳しかった。

「…倒れてる女性と、逃げるチンピラと。お前ならどっちを優先するんだよ。
…犯人の目星はついてんだろうが。」
「…分かってんだよ!分かってるけど…!」
「龍青!!…助けてくれたのに、失礼だよ…。」

声を荒げる龍青を止める。
私のその言葉を聞いて冷静になったのか、1つ小さなため息をついた。

椅子に座ってる私の前までゆっくり近づいてきたあと、

目の前でしゃがんで私の手を握って俯いたあと、龍青は小さく呟く。

「怪我…してんじゃねえよ…。」


「うん…ごめん。
来てくれて、ありがとう。」

ごめんね、龍青じゃなかったときにがっかりして。

「1番に、見つけてやれなかった。」


「……うん。」


「すまん。」

龍青は、俯いたままで。


らしくなくて、いつもの堂々とした龍青は、そこにはいなくて。


私の手を握る彼の手は、なんだか力がなくて。


「なあ…何された?」


目の前の彼は、泣きそうな声でそう聞いてくる。


私は、警官の人と少しだけ目を合わせ、暫くの沈黙の後、答えた。

「…ううん、何も。」


私がされたことを話してしまえば、龍青はもっと責任を負うことになる。

もっと、自分を責める。


それが、いやだった。