もっと、キスして



「何やってんだお前ら!」

「おい!タツキ!サツだ!逃げるぞ!」


その言葉の後、私の体は軽くなった。


「おい!大丈夫か!」

龍青じゃ、なかった。
その事実だけが、遠い意識の中で、重たくのしかかった。

呼吸を整えていると、意識が戻ってくる。
それと同時に、お腹の痛みも、重さを増した。

そこにきてくれた警官にお礼をしようと体を起こす。その人は、私服だった。

「起きて大丈夫なのか?」
「…はい…。
…あの、ありがとうございました。」
「…!
…君は…あの時の…?」
「…あのとき…?」

私は警察に補導された覚えはない。

「あ、いや…なんでもない、こっちの話だ…。
…治療がいるか?」
「いえ…。放っといてもらって大丈夫です。」

私はよろけながら立ち上がり、フラフラしながら駐車場を出ようとする。

「いや、やっぱり少し待ってくれ。」

私のことを心配したのか、警官は車から折りたたみの椅子を持ってくるとそこに座るように促した。

覆面だったのか。それともプライベートだったのか。パトカーでもなければ、警察の制服でもない。

正直まだ意識がはっきりしていないせいか、立っているのもしんどかったのでおとなしくそれに腰掛ける。

救急車とか呼び出されそうなら逃げよう。

その人は、どこかに電話をかけているようで。
話し方からして消防には連絡していないはずだ。


だけど、わたしの特徴を電話越しの相手に細かく説明していて。
ちょっと怖くなる。

「あの…、やっぱりわたし、帰ります。待たせてる人たちがいて。」

わたしが不審に思ったのを察したのか、警官はまあ待てと言ってわたしを制した。

「君はC地区の如月アパートの子だろ?……俺は、この前のときに、桐谷龍青と一緒にいた警官だ。」
「え…。
あの時のって…」

そういうことか…。

「いま電話したのは龍だよ。
もうしばらくしたらこっちにくる。

…なんなら発信履歴も見せようか?」

その人はスマホの画面を本当に見せてくれる。
1分前の発信は、桐谷龍青で、そこに書かれた電話番号も本当に彼のものだった。

「なんか…疑って、すみません。」
「いや、無理もない。こんな状況だし。
龍青たちも君を探し回っていたらしくて、元の場所にはいないらしいからここで待ってて欲しいと言っていたよ。」
「そう…ですか。分かりました。」