どうして毎回毎回こんなに近くに鈍器があるのかわたしはちょっと不思議に思いながら、
落ちていた片手でようやく握れるくらいの木の棒を直ぐ掴む。
「逃すな!」
そう言われて走り出した男の脛を思いっきり木の棒で殴った。
思った通りだ。1人叩かれたら全員がこちらを向く。
…これでいい。
ちのだけ助けられたら、これで十分だ。
その計らいがバレないように木の棒は握りしめたまま、ちのと反対方向に後ずさりする。
背後にはもちろん男たちがいて。
わたしは、5人に囲まれてしまった。
我ながら、自分を大切にすることを忘れてしまっていると思う。
「まあ…あんなんよりはこっちのほうが上物だよなあ。」
ちのがちゃんと逃げれるまでは、時間稼ぎも忘れない。
…それに、最後まで抵抗したら、龍青がもしかしたらきてくれるかもしれない。
わたしはそんな期待を胸に、抱きついてこようとしていた後ろの男の急所を力一杯蹴り上げる。
声も出さず呻きあげているすきに、そいつを飛び越えて走った。
ちのとは、反対方向に。
…よし、ちゃんと全員追ってきてる。
どうか、ちのが無事に逃げれますように。
