もっと、キスして




「じゃあ、凛のその前身のアザは全部その人が…?」



泰成は、途中で口を挟む。



「そう。全部、あの男がつけたもの。」




やっぱり、汚いよね。こんな話。



普通じゃないし。



ちのはずっと泣いちゃってるし。



「……ごめん。」



聞かせてごめん、こんな話。



「なんでお前が謝る必要がある。」



隣から聞こえたその声は、やはりいつも通り優しくて。


「…わたしみたいな状況を、一般的には虐待って言うんでしょ。

でもね、わたしにとってはそれが普通だった。

殴られて、蹴られて、犯されて。
抵抗したら首を絞められたり、お風呂で顔だけ沈められたり、刃物を向けられたり。

普通だったの。


きたない、よね。こんなわたし。


普通じゃないもんね…。」


龍青から何回も言われたからわかる。


嫌われない。


わかるんだけど、怖いものは怖い。


なんて思われてるんだろう。


かわいそうな子??


それとも、汚い子…?



わたしが、わたしとして見られなくなりそうで怖かった。


虐待を受けて育ったかわいそうな子として見られるのが嫌だった。


その場にいるのが怖くて。


「おい、どこ行くんだ。」


「わたし…帰る。」


「…どうしてもって言うなら、家まで送る。」



龍青は半分ため息をつきながら言ってくれた。


わかってた。


結果、わたしがどんな行動をとろうが、龍青だけはわたしの行動を否定しないって。



「待ってよ…!」



でも、龍青が席を立つよりも先に、ちのが声をあげた。