「…帰るわけないじゃん。一緒に帰ろ。んで、ちゃんと話そ。」

───っ!
言葉を失った。
穂乃だ。
ほんとはまだ待っててくれたりするんじゃないかって心のどこかで思ってた。

「~っ穂乃!」

思わず抱きついた。
さっきまでの意地はどこかに飛んでいた。

「…帰ろっか、ありがとう、穂乃。」

「…うん、爽架。」

そうだね、同じ人を好きになったとしても、私たちの絆ってそう簡単に消えないよね。穂乃だもん、2人で解決してこって言ってくれる子だよ。
不思議な安心感が生まれて、自然とさっきまで失っていた笑顔がこぼれた。

玄関まで歩いていくと、そこには、玲大がいた。

「玲大!待っててくれたの?帰っていいって言ったのに!」

そう言って玲大の方に駆け寄っていく穂乃を見てると、思わず泣きそうになった。
今までは、穂乃を見ないようにしてたことで、穂乃と玲大が仲良くしているところを見なくてもすんだ。
だけど、まるで秘めていた思いが一気に出てきてしまうように、熱い何かがこみ上げてきた。

「爽架。1人でため込んでんなよ。何かあったら俺らを頼れよ。な、穂乃。」

優しすぎるよ。このタイミングで玲大にそーゆーこと言われたら、泣きたいのこらえられないじゃん!

それに今、私のこと澤口じゃなくて爽架って呼んだ?
ちょっと、だめでしょ澤口って言わなきゃ。
私、調子に乗っちゃうじゃん。期待させるようなこと、しないでよ…。