あの日の思い出に、思いを馳せる。


そうだ、田舎で、周りは田んぼしかない宮城には、こんなに高くて大きい建物はない。


だからか、あたしには時計台が、全くの未知のモノに見えて、ワクワクした。


「おっきくて、すごぉーい!!」


時計台を見上げて、手を広げた。


「あれ、あの石キレー!!」


あの時も、キラキラしたエメラルドの宝石に、心が踊ったのを覚えてる。


「やっほー!!」


その宝石に手を振ると、キラッと一瞬光ったように思えた。


「んん!?」


目をこらして見てみる。すると、ピカッ!!と光り、あたしの左目に容赦なく入った。


「まっ、眩しくて痛いっ…」


目をゴシゴシと擦り、もう一度エメラルドの宝石を見上げる。すると……。


《私ハ、超高性能人工知能型端末【クロノス】デス。Linkノ発信源ハ、アナタデスカ》

「わっ、あ……」


そう、あの日。
クロノスはあたしに話しかけてきた。


でも、こんなにハッキリ聞こえるクロノスの声は、あたしにしか聞こえていなかった。



《【朱里】、聞イテイマスカ》

《【朱里】》

「あ!!ご、ごめんクロノス」


名前を呼ばれ、我に返る。
どうやら、クロノスは何度もあたしを呼んでいたらしい。