「まあ、お父さんコックやっててさ、中学生の時色々教えてもらったんだよ」


「へー、お母さんは何をされているんですか?」


「コンビニでアルバイトしてたよ。」


「今はやめて家にいらっしゃるんですね〜」



正直ここから先は話したくないところだけど、嘘をつくのも嫌だったから言ってしまった。
でも少し後悔した。



「交通事故で母さんはなくなっちゃってるんだよね..」


彼女は申し訳なさそうにこちらをみていた。
なんてこと言わせちゃったんだろう。
彼女はそう思っているのだろう。


「いや、気にしないで!!なんか空気重くしちゃってごめん!!井口さんの家族は何しているの??」


これ以上重くなる前に、話を変えねば!!
必死になって話を彼女に振ったら尚更空気の悪くなる言葉が帰ってきた。


「私の親は...優先輩と同じで交通事故でなくなりました...」


やらかしてしまった。
彼女にとっておそらく1番辛いことだったのだろう。
俺が母が死んだことを言った時には自分の中で重なってしまったのかと思うと申し訳なかった。



しばらく話もなくきた料理を食べているだけ。
お互いに申し訳なくってしゃべれなくなってしまった。



食事が終えて会計をする時。
彼女が支払いをしようとしていたのですぐに俺も財布をだして



「お会計はご一緒でよろしいですか??」


はい。返事が二人でかぶった時に店員に言われたのが


「仲のいいカップルさんですね。デートですか??」


と笑いながら俺達に言ったのだ。
お互いにちらっと顔をみて違います!と言いたくても恥ずかしさとさっきの申し訳ない気持ちで答えられなかった。


結局その場の会計は割り勘にした。


しばらく歩いて通学路の川沿いの道にきた。
ここまでほぼ会話もなく来ていたからそろそろ話さないとと俺はちょっとやけになっていた。



「井口さん。ちょっとこっちに来てくれるかな??」



そう言って俺は彼女手を自分の方に少し引いた。
彼女は驚いた顔をして手の惹かれた方にきた。



「え、えっと、なんですか??」



「今、井口さんを連れてきたのは、俺がいつも悩みがあったり、辛いことがあった時に来るところなんだけど、すごく綺麗なんだここ。」



「綺麗なんですか?どんなふうに??教えてもらえますか?」


彼女は気になったようでそう聞いてきた。



「緩やかに流れてる川に、夕日が反射してさ、ちょっと眩しくて、嫌なことを忘れさせてくれるような景色だよ...ああ!!俺何言ってんだろ。恥ずかしいな!」



俺が彼女の方を見ると彼女は涙ぐんで



「綺麗なんだろうな。すっごく...私ももう1回でいいからそういう景色がみたいです。」



彼女は本気で言っていた。
その姿を見ている俺は何故か彼女を助けてあげたかったし、今までなかった感情が出てきた。
その時に俺は、出会った時に一目惚れしてたんじゃないかって思った。



彼女は今何を思って涙を流しているのか。
家族か。目が見えないことなのか。
それがわからない自分が悔しかった。