しばらく歩いて、俺が住んでいる寮近くのコンビニの前まで来た。


コンビニを通り過ぎた直後後ろから男の怒鳴り声が聞こえた。


「おいおい!何ぶつかってきてんだよ!てめえのせいで服汚れただろうが!」


なにやら誰かとぶつかった拍子になにかこぼしたらしい。
多分飲み物だろうか??


流石に怒鳴り声を聞いたら振り返ってしまうわけで、空もその瞬間を見ていた。


「あれって隣町の高校生じゃないか??わざわざここまでなにしにきてるんだろうな」


「俺に聞くなよ...まあこっちの方が遊べるところ多いからとしか思えないけどな」


そんな会話をしながらしばらく見ていると、ガタイもよく背もでかい怒鳴っていた高校生の前からちらっと女子高生が見えた。


とても怖がっているようで何が起きたのかわかっていないような感じがした。


何故か俺は気付くと彼女の方に歩き出していた。


「お、おい!お前一人で行くなよ!俺も行くっつうの!!」


そういいながら後ろから空も小走りでついてきた。


「どうしてくれんだ??クリーニング代だしてくれるよなぁ!?」


「え、あ、ううう...」


「なんかしゃべれや!!」


ひたすらに怒鳴るでかい男と泣きそうになりながら落ちている杖を拾う彼女。


おいおい、まさかその棒で叩いたりするんじゃないだろうな!
そんなことしたら明らかに彼女に容赦ない攻撃をするような見た目の男だぞ!?
俺の中でそんな考えをしながら急いでその場に割って入った。


「おい、でかい男。流石に女の人に対しての接し方じゃないね。怒鳴っていたら彼女話せないよ??」


「部外者が入ってくるんじゃねえよ。」


部外者だって??明らかに道を通っていく人の迷惑になっている時点で、俺達も被害者だと思うが...
こんな人の通りがあるところで堂々と叫んでいるのだから。
だがそれは相手に言ってしまうと激怒するだろうから我慢しておこう


「あんたが怒鳴ると彼女は怯える一方だろ。もう少し普通に話せないのか?」


「いちいちうるせえんだよ!!!てめえがじゃあクリーニング代払うかぁ!?ああん!!?」


ちょっとまて、お前は昭和のガキ大将か...
昔っからよくあるヤンキー(ガキ大将)みたいなやつだ。
よくドラマとかで見たことのあるやつ。


「あー、じゃああんたはクリーニング代払えばそれでいいわけですね?もうそれ以上文句は言わないってことでいいのか??」


「おお、そうだよ。金出せばそれでいいんだよ。」


もはやただのカツアゲじゃないか。
カツアゲするならバイトをしろ。そういう考えがどんどん浮かび上がっては口に出ないように抑えた。


「ここから先の信号を左に曲がって、5分くらいまっすぐ行くと右手に新しく出来たクリーニング店があるからそこにいけよ。」


そう言って俺は2千円渡していた。
はっ!!俺は何をしているんだ!!知らない女子高生のためになぜ俺がお金を出しているんだ!!
なんかでもまあ嫌な気分ではないけど!


「これで足りんのかよ!」


「開店セールで安くなってるから早めにいけよ。そうすればその金で足りるから」


そう言うとガキ大将は、舌打ちをしながらクリーニング店の方に去っていった。


あ、彼女は大丈夫だろうか。
ふと振り返り顔をみると...



あ、あれ??見覚えがある。っていうか今日の朝あった顔だった。



「あ、えっと、もう大丈夫ですか??」


そういう彼女に対して俺が答えようとした時


「おお!!もう大丈夫だぜ!安心してくれ!!」


おい、なんでお前が言うんだ空。
必死になって止めたのは俺だぞ!!


「えっと、ありがとうございます」


彼女は涙ぐみながら俺達にそう言って、頭を深々と下げた。


「あ、いやそんな頭下げないでいいよ」


「でも話を聞いていた限りお金を渡してくれたんですよね...本当に申し訳なくって」


彼女は本気でそう思っているようでずっと謝り続けてた。
そんなことされていたら周りで見てる人に嫌な目で見られそうだったから急いで話を変えた。



「ああ!!そうだ、なんであいつにぶつかっちゃったんだい??」


俺が一番気になっていたことを聞いてみた。
後ろで空も気になるな。みたいな顔でこっちを見てきた。


「実は、私は目が見えないんです。それで杖で点字ブロックっていえばわかりますよね??それを確認しながら歩いていたんですが、男性にぶつかってしまって...私は道の端を歩いていたつもりだったんですが。」



彼女の話をしっかり聞くと、ふと1番耳に残った言葉がある。
目が見えてない

というところである。